The Third Chapter : Interview with Atsushi Hamazaki (Japanese ver.)
作品には、それぞれの表現を静かに支え続ける物語があります。その物語は、作品の奥に息づき、創作を続ける中で少しずつ形づくられていくものです。
今回の対話では、濱崎淳史が、空気や記憶、人と人とのつながりといった目には見えないものを主題とする自身の創作について語ります。異なる文化の中での経験や音楽との関わり、そして日々の経験を通して、「再現」ではなく「つながり」を軸とした独自の表現へとどのようにつながっていったのかを紐解きます。
『The Core Message』では、作品そのものだけでなく、その表現を形づくってきた思いや問いにも耳を傾けます。濱崎淳史の言葉を通して、その創作の世界に触れていただければ幸いです。
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Q. 本日はお時間いただき、ありがとうございます。まずは、作家としての歩みや、これまでの制作活動についてお聞かせいただけますでしょうか。また現在はどのような表現に注力されているのか、ぜひご紹介ください。
A.コロナ禍で外出ができず、好きだった音楽活動も止まってしまった時期に、私は大きな閉塞感を抱えていました。そんな中で、外の世界との接点を求めるように絵を描き始めました。
私はバンドでハーモニカを演奏しています。演奏ができない代わりに、音楽が持つ熱気や空気感、目には見えない高揚を、視覚によって表現したいと思ったことが制作の出発点です。
現在は、単純に「音楽を絵にする」という形ではなくなりましたが、目に見えないものを可視化したいという根底のテーマは、今も変わっていません。
Q. 今回のテーマである「The Core Message」について伺います。ご自身の創作を支え続けている思いや、大切にしているものについてお聞かせください。
A.私は絵を通して、その場に漂う「空気」を描きたいと考えています。
私の中には、世界には時代や場所を超えて、人や場所、時間のあいだに生まれる目に見えない共鳴が存在しているという感覚があります。そして、その共鳴を媒介するものが空気なのではないかと思っています。
空気は目には見えません。しかし、人の気配や感情、記憶、土地の温度のようなものを静かに運んでいる。だからこそ私たちは、遠い場所の人や、過去や未来の存在とも、どこかで響き合えるのだと思います。
私はアメリカやインドネシアでの海外駐在を経験しました。文化や言語の違いはあっても、人と人が感覚的に通じ合える瞬間が確かにあると実感しています。
音楽が言葉を越えて人を結びつけるように、絵画を通しても、人と人との共鳴やつながりを感じてもらえたらと思っています。
Q.そうした思いを最もよく表していると感じる作品があれば、お聞かせください。その作品が生まれた背景や、ご自身にとってどのような存在なのかについてもお話しいただけたら嬉しいです。
A.《Whishing Your Peace Silently》は、祖母の死をきっかけに制作した作品です。
幼い頃の私は、「死」は大切な人が完全にいなくなってしまう、とても恐ろしいものだと感じていました。しかし今は、悲しみは確かに存在しながらも、人は亡くなった後もどこかで繋がり続けている、という感覚を持っています。
ただ、人は忘れてしまう生き物でもあります。時間の流れの中で、存在の気配や記憶は少しずつ薄れていく。だからこそ私は、その感覚を呼び起こし、遠く離れた存在へ思いを巡らせるための「場」を絵画によって生み出したいと考えています。
私にとって絵画とは、目には見えない空気や気配を立ち上げ、人と人、過去と現在、そして生と死を静かにつなぐための装置なのです。
| Wishing Your Peace Silently |
Q. アーティストは、自身の表現が変化していく中で、ある問いへと何度も立ち返ることがあります。創作を通して、今も問い続けていることは何でしょうか。
A. 国を越えて生活する中で、会社員として働き、音楽にも携わる自分が、絵画を通して人々に何を届けられるのかを問い続けています。同時に、日本人としての感覚や美意識とは何によって形作られているのかにも関心があります。異なる文化圏を行き来する中で見えてくる距離感や空気感を通して、自分にしかできない表現を探しています。
Q. 移り変わりの早い時代の中で、ご自身のペースや大切にしたい感覚を保つために、意識していることがあれば教えてください。
A. 自分が描きたい空気を表現するために、画面の中の「間」を大切にしています。もともとの性格もあるのか、情報量の多い画面よりも、静けさのある構成に自然と惹かれます。以前は、人を感動させる作品には強い迫力が必要だと考えていました。しかし制作を重ねる中で、必ずしもそうではなく、静けさや余白の中にも強い感情が宿ることに気づきました。そうした「間」や静寂を重視する感覚には、日本の美術や庭園に見られる「間」の美意識との共通点を感じています。
| Look Up to the Sky |
Q. 制作の中で、「しっくりきた」と感じる瞬間はありますか。それはどのような感覚でしょうか。
A. 配置や色彩がうまく噛み合い、画面の中の世界がひとつに繋がったと感じられる瞬間があります。特に、鳥などのモチーフが単なる“置かれた存在”ではなく、空間や空気、世界観と自然に結びついたときに、作品が初めて成立した感覚になります。そうしたオブジェクトが画面全体と有機的にコネクトしたとき、「しっくりきた」と感じます。
Q. 完成した作品だけでなく、「つくる時間」そのものの中で、大切にしていることがあれば教えてください。
A. 「間」に加えて、空気を形作る自然物や人工物、動物の存在が醸し出す雰囲気を大切にしています。私の絵画は、空間とオブジェクトの関係性によって成り立っています。そのため、何を、どこに、どのような色彩で配置するのかを時間をかけて考えます。また、それぞれのオブジェクトが持つ象徴性にも意識を向けています。たとえば鳥は、境界を越えて移動する存在であり、メッセンジャーの象徴として作品の中にたびたび登場します。一方で、人間は見る側に固定化されたイメージを与えやすいため、あえて直接的には描いていません。
Q. 創作を続ける中で、美しさそのものを追求することから、より本質的なメッセージへと意識が移るきっかけとなった出来事はありましたか。
A. 「絵画だからこそできる表現とは何か」を考える中で、単なる視覚的な美しさだけではなく、作品が持つ気配に強く意識が向くようになりました。絵画を単なるイメージではなく、何かを宿し、媒介する存在として捉えています。
私が魅力を感じる作品、たとえば熊谷守一やマティスの作品には、装飾性だけでなく、静かな気配や生命へのまなざしが感じられます。そこには、形や色を超えて、存在そのものが静かに立ち上がってくるようなものがあります。
そうした、過剰に語らずとも存在を示すような作品に強く惹かれ、自身の表現もそのような方向を志向しています。
| Midnight Journey |
Q. 制作を続ける中で、作品を通して伝えたいことは、時間とともにどのように変化してきましたか。
A. 目に見えないものを可視化したいという根本的なコンセプトは、制作を始めた頃から変わっていません。ただ、制作を重ねるにつれて、より静かな空気や気配そのものを表現するようになってきました。それは、作品を通して他者の存在を感じてほしいという思いであり、同時に、鑑賞者自身の想像により深く委ねたいという意識の変化でもあります。私の作品が、鑑賞者に「ここにはない何か」の存在を感じるきっかけになれば幸いです。
Q. 本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。最後に、作品をご覧になる方に、どのような時間を届けたいとお考えですか。そして、その作品との出会いを通して、どのような思いや感覚が心に残ることを願っていますか。
A. 人は文化や言語、そして時間を超えて共鳴しうる。その感覚に触れる時間を、作品を通して届けられたら嬉しいです。
私の絵はキャンバスの中だけで完結するものではなく、その向こうに広がる人や場所、記憶との関係を意識して描いています。
遠く離れた存在であっても、ふとその気配を感じる瞬間がある。
私の作品が、そのような共鳴の入口になれば幸いです。
| Path to the Mystical |
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